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【犯罪者心理】あおり運転はいつから存在した?攻撃を正当化する自己中心的な行為

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極端に車間距離を縮めたりライトを点滅させるなどして、前方の車を威嚇する「あおり運転」は、時に重大な事故につながるケースもあり、社会問題化しています。

近年はドライブレコーダーが普及してきたことにより、その映像が公開されることも多く、中でも無理やり停車させられ、降りてきた運転手により暴行させられそうな場面は、とても正常な人間の行動とは思えません。

今一度、「あおり運転」の実態について確認してみましょう。

 

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あおり運転(煽り運転)とは

近年、事件として報道されることが多くなった自動車による「あおり運転」。そもそも、あおり運転とはどのように定義されているのでしょう。

「あおり運転」について、Wikipediaでは次のように紹介されています。

あおり運転(あおりうんてん)は、道路を走行する自動車、自動二輪、自転車に対し、周囲の運転者が何らかの原因や目的で運転中に煽ることによって、道路における交通の危険を生じさせる行為のこと。
引用/Wikipedia「あおり運転」

 

具体的には、次のようなケースがあげられます。

【前方を走行する車両する次のような行為=あおり運転】
・極端に接近して恐怖心を与える。
・パッシング、ハイビーム、クラクションなどで威嚇する。
・強引な車線変更や幅寄せを繰り返す。
・強引に前に割り込んで停車させるなどする。

 

煽り運転はいつ頃から発生している?

2017年6月5日に神奈川県の東名高速道路上で、無理やり停車させられたワゴン車に乗っていた夫婦がトラックに追突され死亡し、子供2人が奇跡的に助かった事件などが契機になり「あおり運転」が社会問題化しました。

その後、2018年7月には、バイクの男性を執拗にあおった末に追突し男性を死亡させる事件が発生するなど、大きく報道されるようになったため、「あおり運転」が、まるで近年特有の現象であるかのように思われがちです。

しかし、「あおり運転」を含む「車間距離保持義務違反」の取り締まり件数は、2014年9,581件、2015年8,173件、2016年7,625件、2017年7,133件と、一定数存在していました。

そして、2018年には13,025件に急増していますが、これは、2017年の事件などにより「あおり運転」が社会問題化したため、警視庁が取り締まりの強化を全国の警察に指示したことによります。

「あおり運転」は、実は、昔から存在していたのです。

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画像出典/パークブログ

 

話題になった2003年の類似事件

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後方から何度もあおってきた自動車を懲らしめようと、故意に急ブレーキを踏んで追突させ、後続車のドライバーを死亡させた事件が2003年に発生しました。

前方を走っていたのは大型ダンプトラック。10mしかなかった車間距離では後続車は対応できずに、ダンプトラックに突っ込んでしまったのです。

このとき、世間の反応は様々でしたが、「あおったドライバー悪い」「あおり運転に対する見せしめだ」など、トラックドライバーに同情的な意見が聞かれました。

もちろん、急ブレーキにより相手を死に至らしめた行為は許されるものではありませんが、あらためて「あおり運転」の悪質さを浮き彫りにした事件でした。
【参照】急ブレーキで衝突事故を誘発した行為に「殺意はなかった」


ドライブレコーダーの普及で明るみに

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近年「あおり運転」が話題にのぼるっているのは、ドライブレコーダーによって記録されることが多くなったからにほかありません。

重大な事故に至らなかったケースでも、悪質な行為がSNSにどんどん投稿され人目に触れるようになりました。

SNSに公開されるまでもなく、ドライブレコーダーの記録が証拠となり犯人の検挙に至ることも少なくないでしょう。

 

 

 あおり運転をする人の心理・性格・理由・動機

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犯罪者予備軍に潜む危険因子

近年の犯罪心理学では、犯罪に至る人間に宿っている危険因子(リスクファクター)が明らかになっており、これらを持つ人が、言ってみれば犯罪者予備軍であるともいえます。

カナダの犯罪心理学者、アンドリュースとボンタによれば、主な危険因子は8つあり、それは過去の反社会的行動歴(ルール違反)、反社会的交友、反社会的パーソナリティ、反社会的態度、学校・職場での問題、家族の問題、薬物乱用(アルコールを含む)、余暇の不健全な活用である。これらを称して「セントラル・エイト」と呼ぶ。
引用/パークブログ

 

統制力の欠如、長期的視野に欠ける

このような傾向の人たちというのは、どのような性格を持っているのでしょうか。

犯罪心理学が専門の筑波大学教授の原田 隆之にょると

些細なことでカッとする易怒性や、怒りのコントロールができない統制力欠如、すぐに手を出してしまうような衝動性
<中略>
目先のことしか考えられず長期的に物事を見ることができない「現在指向型の時間展望」という特徴も有している。
引用/パークブログ

つまり、「あおり運転」とは、日ごろから善良なドライバーが、何かをきっかけに豹変するのではなく、もともと粗暴な性格の犯罪者予備軍が、状況に応じてその粗暴性が表面化したものといえましょう。

攻撃を正当化する自己中心的な思考回路

それにしても、いくら粗暴な性格だといっても、前の車が多少遅いくらいで、いったいどれくらい不都合だというのでしょう。

「あおり運転」をする本人にとってみれば、「自分はもっと早く走りたい」という自己中心的な欲求でありながら、それに気づくことなく、自分が出したいスピードよりも遅い車が前にいるだけで、「自分の行動を阻害された」と思い込むのでしょう。

こうなると、「あおり運転」をする人にとってみれば、たとえ相手にどんな事情があろうとも、「自分の行動を阻害する奴」として攻撃対象になるのです。

車の運転に限らず、自分の思うようにならないときに、誰かを悪者にして攻撃している人はいませんか?

 

道路上はもはや戦場か

私たちは、それぞれに一定の社会的枠組みの中で生活しています。

たとえば、会社とその取引先や顧客、家族、友人、親戚などといった枠組みは、ある意味フィルターにかけられた人たちの社会です。

そこでは、頻繁に身の危険を感じることもなく、平和に過ごすことができるでしょう。

しかし、一般公道上には、ヤクザもチンピラもキチガイも分け隔てなく存在します。自動車を運転するということは、常にそのような危険な人たちと接する可能性があるということなのです。

しかも、前述の「セントラルエイト」といわれる危険因子を有している犯罪者予備軍とも、路上では、互いの運転を巡って駆け引きすることになるのです。

自動車を運転するということは、単に安全運転ということだけでなく、犯罪に巻き込まれないように注意を払い、常に慎重かつ冷静な行動が求められるものなのです。

 

煽り運転の刑罰・制裁

車間距離を詰めてあおる行為は、道路交通法上では「車間距離不保持」という違反にあたります。

かねてから高速道路での悪質行為が相次いでいたことから、国は、高速道路上と自動車専用道路での違反に限り、罰則を「5万円以下の罰金」から「3月以下の懲役または5万円以下の罰金」に引き上げる対応をしていました。

しかし、近年では死亡事故に至るケースもあり、厳罰を求める声が大きくなっています。

このことを受けて警視庁は、危険運転致死傷罪や暴行罪などの容疑も視野に入れて積極に捜査するよう全国の警察に指示しています。

【参照】あおり運転(煽り運転)の厳罰化と対処法 

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www.guruguru.news

 

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